東銀座と私/尾上松也(前篇)

東銀座と私/尾上松也(前篇)

2023.03.31
東銀座と私
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今と昔を結ぶまち、東銀座。まちや風景は変わってもそこで過ごした時間やかけがえのない経験はいつまでも心に残り続ける―
この春、東銀座にゆかりのある方々に東銀座や銀座、築地などを含め、このエリアで過ごした想い出やこれから期待することなどを文や絵など形態にとらわれず、前篇・後篇として2回にわたり自由に綴っていただくエッセー企画「東銀座と私」を新たにスタートします。

その第1弾となる今回は、銀座7丁目で生まれ育ち、舞台や映像の世界で多方面に活躍する歌舞伎俳優・尾上松也さんにご寄稿いただきました。まずは、前篇をお届けします。

新橋演舞場近くの通り

小さい頃は、家の周りにはあまり公園など遊ぶ場所がなく、路地裏でボールを蹴ったり、投げたりして遊んだり、父とキャッチボールをしたり、僕にとってはまち全体が遊び場でした。父が幼い頃は近所から清元の三味線が聞こえるなど江戸の情緒もまだ残っていたようです。

昼間に新橋演舞場あたりを歩いていると、必ず誰かしらに遭遇していましたね。今より花柳界の方たちもたくさんいらっしゃって、昔からのお店も多かったというのもありますが、歩いていると芸妓のお姉さん方や、どこかのお店の方など、顔なじみの方に必ずお会いして、お菓子やお小遣いをいただいたり…そういう想い出があります。

小さい頃の記憶に残るごはん屋さんはいくつかあって、もう閉店してしまいましたが、銀座6丁目にあった焼肉屋の「十里」は、家族で日頃から行っていました。ほかにも、父が晩年の頃によく通っていた炭火焼の「天」、歌舞伎座の近くにあるカレーの「ナイル」、あとここも閉店してしまいましたが、新橋演舞場そばの中華料理の「蘭州」もよく食べに行っていて、出前を取ったりもしていました。

ナイルレストラン

この近辺は高級ブランド中心の大人のまちという印象で、子供が遊びに行く場所はあまりなかったのですが、おもちゃがたくさん売られている「博品館」は、おもちゃ箱のようで、祖母と頻繁に行っていました。それから、銀座の“歩行者天国”にも家族でよく出かけましたね。歩行者天国の期間中は、昔からベンチやパラソルが置いてあって、そこでどこかのお店で買ってきたものを食べたり、飲んだりしている方たちがたくさんいらして、歩いているととても気持ちよくてすごく楽しかった記憶があります。

歩行者天国の様子

小学校は別の地域の学校に通って、中学からは銀座中学校に通いました。小学生の頃は、学校が別の地域ということもあって、地元の友達はひとりもいなかったのですが、銀座中学校に通うようになって、初めて家が近所の友達ができたんです。それからは自転車によく乗るようになりましたね。というのも、中学生になってくると遊びもちょっと大人びてくるので、なかなかこう路地裏でボールを蹴ったり、投げたりするくらいでは満足いかないですし、かといって中学生が楽しめるようなアミューズメント施設はこの地域にはなくて。自転車で八丁堀や勝どきに住んでいる友達のところに行って、駄菓子屋でお菓子を食べながら話したり、空き地で野球をしたり、友達の家でゲームをしたり。小学生の頃にはできなかったことを中学生活ではいろいろと経験して、地元の繋がりもたくさんできたのはいい想い出です。

「東銀座と私」第1弾 尾上松也さん 後篇

尾上 松也(おのえ・まつや)
1985年生まれ。父は六世尾上松助。1990年5月、歌舞伎座『伽羅先代萩』の鶴千代役にて二代目尾上松也を名のり初舞台。歌舞伎の舞台をはじめ、ミュージカルや大河ドラマ、テレビドラマなど幅広く活躍している。

尾上松也 プロフィール

「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」シーモア役
日程:2023年4月12日(水)まで絶賛上演中
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)

「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」公式HP

「團菊祭五月大歌舞伎」『寿曽我対面』曽我五郎時政役
日程:2023年5月2日(火)~27日(土)/ 会場:歌舞伎座

「團菊祭五月大歌舞伎」公式HP

「新作歌舞伎 刀剣乱舞」演出・出演
日程:2023年7月2日(日)~27日(木)/ 会場:新橋演舞場

「新作歌舞伎 刀剣乱舞」公式HP