今と昔をつなぐ街、東銀座。その中でも、武家地として発展し、都民の食文化を支えてきた築地は、その歴史と伝統を守り、発展させていく上で欠かせない場所のひとつである。今回は、生まれも育ちも銀座三丁目、昭和通りも木挽町通りもずっと見守り続けてきた銀座四丁目東町会の松戸会長にご登場頂き、東銀座の今までとこれからについてお話をお聞きした。
― 松戸会長はどのくらいこの街にいらっしゃるのですか?
生まれも育ちも銀座三丁目東町会地区です。今から25年前に4丁目に引っ越してきました。なのでこの辺では新参者です(笑)。
― 25年で新参者ですか!松戸会長の経歴をお聞きできますか?
4年程前まで『有限会社松戸靴店』という靴屋をしていました。
― 靴屋さんですか!
昭和通りに面した場所で父親が靴屋をしていて、修理と注文靴を扱っていました。「社会に出たらお前は跡を継いで靴屋をやるんだぞ」と言われて育ち、商業学校に行きました。卒業してから10ヶ月程で父親が亡くなってしまい、すぐにお店に立つようになりましたね。3丁目から4丁目に引っ越してきても店はずっと続けました。
― 常連さんも沢山いらしたんじゃないですか?
そうですね。松戸靴店は紳士靴専門店でしたので、歌舞伎役者さんや、大道具さんもお客さんでいらっしゃいました。子供の頃、歌舞伎座の正面は我々には縁の無いものだと思って、昭和通りの楽屋口を入ってくとカウンターがあってね、そこに注文靴を届けに行ったりしていました。表の歌舞伎座さんは全然知らなくて、裏の歌舞伎座さんばかりでした(笑)楽屋口から入って、お芝居を見せてもらったこともあります。届け物に行くと、「ご苦労さん」ってお菓子貰ったりね。
― まさに裏エピソードですね!今では考えられません。今の町会の活動はいつ頃からされているのでしょうか?
20歳くらいの時からしていました。
― すっごくお若い時からなんですね。
父親が亡くなった頃は自宅で葬儀するのが当たり前の時代で、地域のご葬儀を手伝うことが町会の大事な仕事でした。その時に大変近隣にお世話になり、母親から「町会を頼まれるよなことがあったら応えろ」と言われていました。その頃から既に街に若い人が少なくなっていく兆候がありましたからね。
― 町会の活動は今はどんなことをされているのですか?
盆踊りと、鉄砲洲稲荷神社のお神輿の本祭り、餅つき等です。私の「お祭り」とは、「計画・寄付を集める・担ぎ手を集めてどう運営するか」という完全に事務方です。
― そうなんですね。では、会長になられたのはいつ頃ですか?
3年前です。
― 今まではどんなことをされていたのですか?
実は、父親が早く亡くなった時に町会の役員の中に消防団員の方がいました。消防団も若い人がいなくなるということで、その時に入り約53年間消防団一筋でやっておりました。
― 消防団の内容は主に何をされていましたか?
防火防災救急。消防署の指導を得て活動をします。火事が起きれば連絡が来ますし、現場に向かいます。
― 町会の活動は幅が広いんですね…!長い歴史の中で、松戸会長はこの街のどのような変化を見てきましたか?
まず、三十軒堀という堀割りが無くなって道路になりました。三原橋の地下街、あれはいわゆる運河だったのですが、無くなって銀座と地続きになりました。あと、昭和通りが地下でバイパスみたいに新橋の方まで行ってますよね。あれは昔は平坦でした。真ん中が緑地台みたいになっていて。いずれこの昭和通りは都電が通るよと言われていたのですが、とうとう通りませんでした(笑)昭和通りを馬車が通っていたのなんて想像できないでしょう?子供の頃、馬車にイタズラして怒られたりして…昭和通りにはそんな思い出が沢山あります。
― すっごく変わりましたね(笑)変化しつつも、変わらず「ここはずっと好き!」なところはありますか?
東銀座の一番の特色であると思っている、「安全で安心な街」というところです。銀座みたいに立派でも、築地みたいにパワーがあるものでもないけれど、安心できる穏やかな街ですね。そこは昔からずっと変わりません。長年消防団をやっていたので、街の安全はやはり気になるところです。
― 逆に「こうしていきたい」というものはありますか?
「街を綺麗にしたい」という想いはやはりあり、毎朝6:30~8:00まで自宅周り、近所を清掃しています。町会活動を続けていって、若い人達にも理解して続けていってほしいと思っています。
― 東銀座エリアマネジメントの清掃活動にもご参加頂き、ありがとうございます。
今更自分たちで大きなお金をかけて派手なことをするなんて力量的にも無理なので、このような町おこしの組織(東銀座エリアマネジメント)ができて、それを私たちがお手伝いして…そうすると自分たちだけで活動するよりも、自分たちが願っているものが達成できる可能性が大きいじゃないですか。我々の仕事は、街の人にその気になってもらうことだと思っています。「あれをやります、これをやります」って自分たちだけで言えることじゃないから、東銀座エリアマネジメントの活動に協力して、街を元気にすることが私たちができることなのかなと思っています。
― ありがとうございます。是非宜しくお願いいたします!ではこの街に期待することは何でしょうか?
先程「穏やかな街だ」という話をしましたが、活気も無いと困ります。特に「あのお店みたいになりたいなあ」と憧れちゃうような物品のお店がもっと増えてほしいという想いはあります。それで人の流れが隆盛になったら、活気にも繋がるのではないでしょうか。また、町おこし(東銀座エリアマネジメント)を手伝い、若い人達にも理解してもらいながら、この街の安全安心を受け継いでいってもらいたいです。
銀座四丁目東町会会長。1942年生まれ。銀座4丁目9番~14番地域を該当区域とする銀座四丁目東町会で3年前より会長を務める。